2013年11月28日木曜日

マハーバーラタ 『マハーバーラタ』のあらすじ

マハーバーラタ

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マハーバーラタの作者とされるヴィヤーサ

クルクシェートラの戦いを描いた図
マハーバーラタ』(महाभारत Mahābhārata)は、古代インドの宗教的、哲学的、神話的叙事詩ヒンドゥー教の聖典のうちでも重視されるものの1つで、グプタ朝ごろに成立[1]したと見なされている。「マハーバーラタ」は「バラタ族の物語」といった意であるが、もとは単に「バーラタ」であった。「マハー(偉大な)」がついたのは、神が4つのヴェーダとバーラタを秤にかけたところ、秤はバーラタの方に傾いたためである[2]


作者[編集]

作中人物の1人でもあるヴィヤーサの作と見なされているが、実際の作者は不明である。

特徴[編集]

  • 世界3大叙事詩の1つとされる。『ラーマーヤナ』と並ぶインド2大叙事詩の1つでもある。
  • 原本はサンスクリットで書かれ、全18巻、100,000詩節[3]、200,000行を超えるとされる。これは聖書の4倍の長さに相当する[4]
  • 物語は世界の始まりから始まる。その後、物語はパーンダヴァ族とカウラヴァ[5][6](この二つを合わせてバラタ族(バーラタ))の争いを軸に進められ、物語の登場人物が誰かに教訓を施したり、諭したりするときに違う物語や教典などが語られるという構成で、千夜一夜物語と似た構成になっているが、大きな相違点としてパーンダヴァ王家とカウラヴァ王家の争いの話自体が語られる物語であることがあげられる。
  • 数々の宗教書も『マハーバーラタ』の物語の登場人物をして語らせることも多く、『バガヴァッド・ギーター』は著名な部分であり、宗教上、特に重視されている。

内容[編集]

パンチャーラ国にはドルパダ英語版王子と仲の良いドローナという少年がおり、ヴェーダをともに学んでいた。やがてドルパダは国王になると、ドローナに「幼い頃は我らの間に友情があったが、国王とそうでない者との間に友情は成り立たない」と諭した。ドローナはパンチャーラ国を後にするとクル族パーンダヴァ国に入り、やがて首都のハスティナープラ英語版で腰を落ち着けた。ある日、5人の王子達が困っているところに出くわし助けたところ、請われてある条件と引換に教師になることに同意した。弟子には、5人の王子達(ユディシュティラビーマアルジュナナクラサハデーヴァ)の他にカルナが居た。ドローナは彼らに戦い方を教えると、かねてからの約束通り、ドルパダ王を捕らえるように願い出た。弟子達はパンチャーラ国に攻め入り、ドルパダ王を捕まえた。ドローナが「国王とそうでない者との間に友情は成り立たないのだから、君の国を奪ったのだよ」と言い放ったが、ドルパダ王の懇願を受け入れ、ガンジス川の北をドルパダ王に返還し、南にドローナの国を作ってパンチャーラ国を分割した。ドルパダ王はいつかこの屈辱を晴らすためにヤグナ英語版を行うと、双子の兄妹(ドゥリシュタデュムナ英語版ドラウパディー)が生まれた。
ドラウパディーが絶世の美女に成長すると、ドルパダ王は花婿選びを開催した。カルナは優れた弓の名手ではあったがクシャトリヤ以上の階級という条件に合わなかったためアルジュナが勝利すると、パーンダヴァの5王子はドラウパディーを連れて家に帰った。アルジュナの母クンティーは忙しくしていたため、アルジュナがドラウパディーの花婿選びで勝ったという5王子の報告を、托鉢して施物を集めてきたものと勘違いし、兄弟で等しく分かち合うよう言った。こうしてドラウパディーは5王子が共有する妻になった。また、アルジュナは転生したインドラである。
ユディシュティラが大きくなると、父王パーンドゥの跡を継いでいた叔父の盲目王ドゥリタラーシュトラ英語版クル国の半分をユディシュティラに与えた。ユディシュティラはカーンダヴァ森英語版インドラプラスタ英語版の王宮に住むようになった。盲目王の子ドゥルヨーダナは5王子の幻想宮殿を訪ねたとき、水の中に落ちてしまい、ドラウパディーの女中達がそれを喜んで眺めた。元々次の国王は自分だと思っていたドゥルヨーダナは、この扱いに激怒して陰謀を巡らす。ドゥルヨーダナこそ悪魔カリ英語版の転身である。ドゥルヨーダナの怒りを知ったビーシュマ英語版は、首都ハスティナープラ英語版を分割してユディシュティラに与え、平和を維持することを提案した。カウラヴァシャクニ英語版が謀ったサイコロ賭博事件英語版が起こり、ユディシュティラは全てを巻き上げられ、王国も失ってしまう。ユディシュティラは、妻ドラウパディーすら賭けで失い、彼女は奴隷にされた。かつて身分の違いを理由に袖にされたカルナは、落ちぶれた姿を目にして奴隷女と罵った。
サイコロ賭博事件の結果、5王子は13年間に渡る森の中での逃亡生活を強いられた。
その後、パーンダヴァ王家は5王子達カウラヴァ王家からの王国奪還を要求し対立が深まった。アルジュナが師ドローナに弓引く戦争をためらっていると、いとこのクリシュナが自分の正体がヴィシュヌであることを証し、「道徳的義務を遂行する自分のダルマを果たすべきで、友人や知人の死で苦しんではならない。彼らは肉体の死によってその病んだ魂を純粋平和な世界へ開放することが出来るのだから」と説いた。(『バガヴァッド・ギーター』)
クルクシェートラの戦い英語版でカウラヴァ王家は全滅する。カルナはアルジュナによって殺され、昇天して太陽神スーリヤと一体化した。ドゥルヨーダナはビーマに殺された。ドローナは、ユディシュティラに捕まえられたところをドゥリシュタデュムナに殺され、悲報を聞いたアルジュナは師の死を悼んだ。

神話の受容[編集]

東南アジアにおける受容[編集]

東南アジアでは『ラーマーヤナ』が王権を強調するものとして翻案され、支配階級のみならず民衆の間でも親しまれているが、『マハーバーラタ』は南インドのドラヴィダ人など周辺諸民族を野蛮人として扱い、パーンダヴァ王家のバラモンクシャトリヤ階級としての正当性を強調する個所が多かったため東南アジア一般ではあまり普及しなかった。しかしながら、当然ある程度の受容は見られ、インドネシアバリ島ワヤン・クリットにおいては『ラーマーヤナ』と同じぐらいの頻度で題材に使われることもある。

創作か事実か[編集]

『マハーバーラタ』に限らず神話は創作か事実を基にした物語か問題になることが多い。『マハーバーラタ』に記された「インドラの雷」の描写が核兵器を想起させるものである事から、超古代文明の古代核戦争説を唱える者もいる。しかし、創作の場合でも登場人物がだけに核兵器に匹敵する能力が描写されていたとしても不思議は無いというのが一般的な考え方である。







『マハーバーラタ』のあらすじ
 
 
 
ハースティナプラ国王シャーンタヌは、ガンジス河の女神ガンガーに恋をし、求婚する。ガンガーは、自分がどんなことをしてもそれを止めたり、訳を問い質したりしなければとの条件のもと、承諾する。ガンガーはシャーンタヌとの間に次々に七人の子を生むが、生み落とすや否や皆殺してしまった。これには深い訳があった(第1章)。シャーンタヌは約束に縛られて、ガンガーのなすがままだったが、八番目の子が生まれた時には、耐え切れず、殺害を食い止める。王の約束違反により、ガンガーはシャーンタヌのもとを去る。この八番目の子がデーヴァヴラタ、後のビーシュマである。
ガンガーが去って数年後、シャーンタヌ王は漁師の娘サティヤヴァティーに一目ぼれし求婚するが、サティヤヴァティーの父親に「私の娘の子が王位を継承できるなら」と条件をつけられ、苦悩する。成長したデーヴァヴラタは、文武両道に秀で、理想的な王位継承者と期待していたからである。父の悩みを知ったデーヴァヴラタは、自らの王位継承権を放棄し、王国の将来に禍根を残さぬため、生涯の不婚を誓う。この困難な誓いの後、彼はビーシュマ(恐るべき者)という名で呼ばれるようになる。かくてシャーンタヌはサティヤヴァティーを妻とし、二人の間には二人の王子が生まれる。
ほどなくシャーンタヌ王は死去する。ビーシュマの父と王国への献身も空しく、シャーンタヌのこの二人の王子も、共に後継ぎを残すことなく夭折する。サティヤヴァティーはビーシュマに誓いを放棄し、王となり、王国に後継ぎを与えるよう懇願するが、ビーシュマはこれを受け入れず、サティヤヴァティーの結婚前の子、聖仙ヴィヤーサ(『マハーバーラタ』の作者とされている)が王子の妃たちに子を授けることになる。これがドリタラーシュトラ、パーンドゥ、ヴィドゥラの三兄弟である。ヴィドゥラは王子の妃の下女とヴィヤーサの間の子であったため、王子にはなれず、兄二人の相談役となった。
長男のドリタラーシュトラは生来盲目であったため、パーンドゥが王位を継ぐ。この強力な王は狩猟の最中、誤って聖仙リシ・キンダマとその妻を殺してしまったため、王位を退き、森に行かざるを得なくなる。しかもキンダマの呪いのため、生涯女性に触れられなくなっていた。パーンドゥは未だ息子にめぐまれていなかった。しかし、第一夫人クンティーが若き日に聖仙ドゥルヴァーサから授かった呪文の力で、パーンドゥは五人の息子を授かることになる。これがパーンダヴァ五王子即ち、ユディシュティラ、ビーマ、アルジュナ、ナクラ、サハデーヴァである。
パーンドゥ退位後、盲目の兄ドリタラーシュトラが即位する。パーンドゥは第二夫人マードリーの色香に負けその身体に触れ、リシ・キンダマの呪いにより死亡する。クンティーに育てられた五王子はやがてハースティナプラでビーシュマ、ドリタラーシュトラに庇護されることになるが、ドリタラーシュトラの百人の王子たちはこれを好まなかった。五王子と百王子の対立はユディシュティラと百王子の長男ドゥルヨーダナの間でのハースティナプラの王位継承権争いによって決定的となる。これを案じたビーシュマの建言で王国は分割され、ドリタラーシュトラと百王子はハースティナプラを、ユディシュティラは辺境の地インドラプラスタを支配する。
インドラプラスタは繁栄を極め、ユディシュティラは帝王即位式を挙行する。絶世の美女ドラウパディーもまた五王子共通の妻となっていた。ドゥルヨーダナは嫉妬に苛まれる。そこで母方のおじシャクニの入れ知恵で五王子をサイコロ勝負に誘い、シャクニの手で五王子から王国、五王子自身、妻ドラウパディーに至るまですべてを巻き上げてしまう。ドラウパディーのドリタラーシュトラへの必死の訴えにより、一旦は勝負はなかったことにされ、五王子は王国と自分達およびドラウパディーの自由を取り戻すが、その後ユディシュティラが再度サイコロ勝負を強いられ、またも敗北する。その際の条件に従い、五王子は13年間追放生活を送ることになる。12年を森で過ごし、13年目は百王子方に居場所を知られずに過ごさなければならなかった。もしこの1年間に見つかってしまえば、再び12年間森で暮らさなければならなかった。
五王子は追放の13年をなんとか乗り切り、百王子側に王国(インドラプラスタ)の返還を要求するが、ドゥルヨーダナはこれを拒否。両陣営の対決は避けられないものとなって行く。かくてハースティナプラ近郊クルクシェートラの地に、両陣営の大群が集結する。
いよいよ大戦が始まろうという時、五王子最高の戦士アルジュナは、突如戦意を喪失する。敵方に恩ある人々の姿を見かけたからである。パーンダヴァ五王子・カウラヴァ百王子共通の大伯父ビーシュマ、同じく両者共通の武術の師ドローナなどである。二人とも心はむしろ五王子側にありながら、誓いや禄に縛られて百王子方に立って戦わなければならなくなっていた。
アルジュナの御者をつとめていた五王子の従兄弟クリシュナは、アルジュナに戦士の義務などを説き、戦意を回復させる。ヒンドゥー教徒にとり最高の経典ともされる『バガヴァッド・ギーター』の場面である。
いよいよ大戦は始まり、死闘が続く。百王子方最初の総司令官ビーシュマは、戦闘10日目にアルジュナに身体中に矢を突き立てられて倒れる。ビーシュマの後を継いだドローナも五王子方の姦計により15日目に倒される。百王子方第三の総司令官カルナは、17日目にアルジュナの矢に倒れる。
カルナは実はクンティーのパーンドゥとの結婚前の子で、アルジュナの実の兄だった。運命のいたずらでカルナと五王子は敵味方に分かれて戦っていたのである。アルジュナはそれを知らなかったが、カルナは大戦直前にクンティーなどからこの恐るべき秘密を聞いていた。カルナの心は乱れた。しかし、不遇の時代に自分に目をかけてくれたドゥルヨーダナへの忠誠心から、結局百王子方に立ってクルクシェートラに赴き、アルジュナに敗れ、士道に殉じたのである。五王子方でもアルジュナの最愛の息子アビマニユ、ビーマの息子ガトートカチャなど有力な武将達が倒された。
18日目、百王子方最後の総司令官シャリヤもユディシュティラに倒され、百王子方の総帥ドゥルヨーダナも五王子の次男ビーマとの棍棒戦に倒れる。かくして大戦はパーンダヴァ五王子側の勝利に終わった。
しかし、実は戦いはまだ終わっていなかった。父親を姦計で殺され復讐に燃えるドローナの息子アシュワッターマンが、数人の味方と共に五王子方の陣営に夜襲をかけたのである。五王子方は外出していたクリシュナ、五王子など以外はほとんど全滅してしまう。五王子の息子たちもすべて殺されてしまった。カルナの死後、母クンティーからカルナが自分たちの実の兄であったことを知らされた衝撃もあり、五王子は自分達の勝利の味の苦さに打ちのめされた。
なんとか悲しみから立ち直ったユディシュティラは、弟たちと共に再び統合されたハースティナプラを統治する。敵方であったにもかかわらず、百王子たちが全滅した後、五王子にかしずかれ静かに暮らしていたドリタラーシュトラとその妻ガーンダーリーも、やがて生への倦怠をおぼえ、世を捨てて森へ行く。五王子の母クンティーも二人に従った。三人はしばらく修行の生活を送った後、山火事に巻き込まれこの世を去る。
ユディシュティラの36年の統治が過ぎた頃、クリシュナの一族ヤーダヴァ族が同士討ちによって滅びたという知らせが五王子のもとに届く。クリシュナ自身、兄バララーマとともに世を去っていた。五王子はかけがえのない指導者を失い、世の無常に打ちひしがれた。ユディシュティラは王国をアルジュナの孫パリクシットに譲り、弟たち、ドラウパディーと共にヒマラヤへ向かう。妻と弟たちは次々に倒れるが、ユディシュティラはただ一人生き残り、生きたまま天界に上る。そこで神々から最後の試練を課されるがもちこたえ、弟たち、ドラウパディー、カルナ、ビーシュマ、ドローナ、クリシュナなど懐かしい人々との再会を果たす。

http://www.mekong-publishing.com/books/arasuji.htm

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